喪黒福造の憂鬱-ハルヒ編

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:53:12.30 ID:O2wowKnOO
わたしの名は喪黒福造……人呼んで『笑ゥせぇるすまん』
ただの『せぇるすまん』じゃございません。わたしの取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

この世は老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり……
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

さて、今日のお客様は……

【涼宮ハルヒ(15)学生】

ホーッホッホッホ……

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:54:59.97 ID:O2wowKnOO
ハルヒ「はぁ……」

喪黒「あの、もしもし?」

ハルヒ「何よ、あんた。何か用?」

喪黒「すみません、あなたのようなうら若きお嬢さんが、道の真ん中であんな深い溜め息などついていたものですから、どうかしたのかと思いまして……」

ハルヒ「……ちょっとオジサン、もしかしてナンパ?」

喪黒「ホッホッホ……まあ立ち話もなんですから、どうです? そこらでお茶でも」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:56:22.74 ID:O2wowKnOO
―――BAR 魔の巣

喪黒「ホホゥ、毎日が退屈なんですか」

ハルヒ「そう、ホントつまんない! 面白いことなんか一つもないわ!!」

喪黒「しかし、学生でしたらボーイフレンドと遊んだり、今は一番楽しい時期では?」

ハルヒ「ダメ、中学の時色んな奴と付き合ったけどみんなつまんない男ばっかり……!
高校でも同じような男しかいないし」

喪黒「それはそれは……ところで、あなたの考える面白い人とは、一体どのような人なんですか?」

ハルヒ「そうね……宇宙人とか未来人とか超能力者とか……そういう不思議な人が良いわね」

喪黒「それじゃあ、あなたのお眼鏡にかなう人はなかなか現れないでしょうな」

ハルヒ「まあね……」

喪黒「では部活動なんてどうです? 仲間と一緒に青春の汗を流すというのもなかなか良いものですよ?」

ハルヒ「それもダメ。 片っ端から仮入部してみたけど運動部はみんなつまんなかったし、
ミステリー同好会も超常現象研究会も単なるマニアの集まりばっかりで話になんないわ」

喪黒「それは難儀ですなァ」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:57:29.34 ID:O2wowKnOO
ハルヒ「はぁ、何か面白いことでも起きないかしら……」

喪黒「ホッホッホ……あなたのお悩みはよくわかりました。
……申し遅れましたが、実はわたくし、こういう者です」

ハルヒ「『ココロのスキマ、お埋めします』……何よ、あなたもしかしてセールスマンか何か? 言っとくけど、あたしお金なんて持ってないからね?」

喪黒「お察しの通り、確かにわたしはセールスマンです。しかしボランティアですので、お金は一切いただきません……
わたしの仕事は、あなたのようにココロにスキマを持っている方に、力をお貸しすることなのです。
お客様が満足されましたら、それが何よりの報酬です」

ハルヒ「ふぅん……それで、何をしてくれるの?」

喪黒「まずアドバイスを一つ……面白いことがないのであれば自分で作れば良いのです。
例えば、あなたの満足するクラブがなければ新しく設立してしまえば良いわけです」

ハルヒ「あぁ、それいいわね!」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:58:32.21 ID:O2wowKnOO
喪黒「ホッホッホ、それからこれをどうぞ……」

ハルヒ「え…何なの? この像……」

喪黒「これは遠い昔、あらゆる願いを叶えてくれたといわれる猫の神様をかたどった物です。
その像に願をかければ、たちどころに叶えてくれるでしょう」

ハルヒ「ホントに?」

喪黒「きっと、あなたの日常を面白おかしく変えてくれるはずですよ」

ハルヒ「へぇ……」

喪黒「ま、騙されたと思って試してみてくださいな。ホッホッホ……」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 00:59:33.84 ID:O2wowKnOO
――ハルヒ宅

ハルヒ(ホントにこんなもん、ご利益あんのかしら? まぁいいわ、どうせタダだったんだし……)

ハルヒ「えっと、どうか面白いことが起きますように……宇宙人や未来人や超能力者が現れますように……そして、一緒に遊べますように」

ハルヒ(ふう……これでいいのかしら…? まあ願い事はさておき、明日は早速クラブ作りに取り掛かろ……
まず、部室見つけなきゃ……あと部員と、提出用の書類……はキョンにやらせればいいか……
部員は、とりあえず可愛い子と……
あと謎の転校生なんかも欲しいかな……それで―――……ぐぅ……)

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:00:21.84 ID:O2wowKnOO
―――後日

ハルヒ「この間はありがとね、オジサン!」

喪黒「どうですか、その後の学校生活は?」

ハルヒ「このチラシを見て!」

喪黒「ホホゥ、SOS団ですか?」

ハルヒ「『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』の略よ、これを新しく作ったの。
まあ、宇宙人や未来人や超能力者はまだ見つからないけど、
良い感じに部員も集まったし、それなりに楽しくなりそうだわ!」

喪黒「それは結構ですな」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:01:56.73 ID:O2wowKnOO
ハルヒ「ホント、ありがとね!」

喪黒「いえいえ、お礼には及びませんよ。
……ただし、一つだけ気をつけて欲しいことがあるのです」

ハルヒ「え、何を?」

喪黒「今の状況はあなたが願った結果なのです。何があろうと、それに一切不満を持ってはいけませんよ? さもないと……」

ハルヒ「さもないと、どうなるの?」

喪黒「取り返しのつかないことになってしまいます。
いいですね、くれぐれも、注意してくださいよ?」

ハルヒ「わ、わかったわ……」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:03:59.46 ID:O2wowKnOO
――数週間後、SOS団部室

キョン「朝比奈さん、そんな律義にハルヒの言い付けを守らなくても」

みくる「いえ、良いんです。はい、お茶どうぞ。
……あれ? そのフォルダ、どうしてあたしの名前がついてるの?」

キョン「(ぐあ、抜かった!)いやあ、これはその、何だ、さあ何でしょうね、うん、何でもありません」

みくる「嘘、いいじゃないですか、見せて見せて」

キョン「(せ、背中に柔らかな感触が!)
あの、朝比奈さん、ちょっと離れ……」

みくる「そんなこと言わないで、ね、ね、見せて下さいよ―――」

ガチャ

ハルヒ「何やってんの、あんたら」

みくる「あ……」

ハルヒ「楽しそうね。あんた、メイド萌えだったの?」

キョン「なんのこった」

ハルヒ「……ねぇ、着替えるんだけど?」
キョン「ああ、いいぞ?」
ハルヒ「出てけって言ってんの!!」
キョン「あぁ、すまん(いつも気にせんくせに、どうしたんだ?)」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:05:34.50 ID:O2wowKnOO
ハルヒ「……もう帰る!」

バンッ!

キョン「まったく……なんだ、あいつ?」

ハルヒ(つまんない、面白くない! ぜんっぜん面白くない!! こんなの、結局前と変わんないじゃない……! ……だったら、だったら!)

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:06:25.10 ID:O2wowKnOO
喪黒「ホッホッホ、さて、今頃彼女はどうしてるんでしょうか……おや? こりゃ大変だ」


―――閉鎖空間

ハルヒ(灰色の世界で……青い巨人が、街を壊してる……でも全然怖くない、楽しい!)

喪黒「あらら、これはまたずいぶん派手にやってますな」

ハルヒ「あっ! オジサン見て、不思議よ!! とうとう出会ったのよ、あたし自身が!」

喪黒「涼宮さん……あなた忠告を無視しましたね? あれほど不満を持ってはいけないと言ったのに……
このままでは、みんな壊れて無くなってしまいますよ?」

ハルヒ「いいのよ! もうあんなつまんない世界もSOS団もいらない、だって今こんなに面白いもの!!
きっと明日からはこの新しい世界が始まるの……! そうに違いないわ!!」

喪黒「いやはや……まったく仕方ありませんねェ。そんなに別の世界とやらに行きたいのなら、わたしが連れていって差し上げましょう!」

ド――――――ン!!!

きゃああああ!!!

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:07:25.21 ID:O2wowKnOO
――おい……起きろよ……涼宮、涼宮!

ハルヒ(ん……学校? そっか、あたしいつの間にか寝てたんだ……)

おい! もうHRだぞ、涼―――

ハルヒ「うるさいわね、分かってるわよ! キョ……ン……?」

谷口「何言ってんだ? ほら、先生来たぞ」

ハルヒ「え……ちょ、ちょっと! あんた誰よ!? そこはキョンの席でしょ!」

谷口「は? まだ寝ぼけてんのかよ……ここはずっと俺の席だろうが」

ハルヒ「違うわよ! あたしの前はずっとキョンで、席替えの後も……キョン、キョンは? キョンどこ行ったの!?」

谷口「おい、落ち着けよ。それにキョンって誰だ? そんな奴うちのクラスにいないだろう」

ハルヒ「そ、そんなのって……そうだ! SOS団は!?」

谷口「おい、どこ行くんだ涼宮! HR始まるぜ!?」

ハルヒ(文化部の部室棟……文芸部があった場所……!)

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:10:08.45 ID:O2wowKnOO
ハルヒ(文芸部室……ここだ!)

ハルヒ「み、みんな! いる!?」

バンッ!

女生徒「あ……あの、何か御用ですか?」

ハルヒ「あ、あなた誰よ!? ここはSOS団の部室だったはずでしょ!!」

女生徒「え? あの、ここはずっと前から文芸部が使ってますけど……
他と間違えてるんじゃ―――」

ハルヒ「そんなはずないでしょ! 文芸部は今年有希一人しか部員がいないからここを……
あ、有希……有希はどこ? いるんでしょ? 有希! みくるちゃん! 古泉君!? キョン!!
なんで……なんでみんないないの!!? 出てきなさいよ……! 出てきてよ、みんなぁ……!!」


喪黒「案外、世界というのは誰かさんの見ている夢なのかもしれません。つまり彼女は、夢から覚めただけに過ぎないのです。
まあ、それでも一時とはいえ、楽しい夢を見れたのですから、ましな人生だったんじゃないんですかねェ」

ホーッホッホッホ!!


逆噴射J ◆lW31l/VtQc mirrorhenkan