- 喪黒福造の憂鬱-長門編
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 01:58:33.84 ID:O2wowKnOO
- わたしの名は喪黒福造……人呼んで『笑ゥせぇるすまん』
ただの『せぇるすまん』じゃございません。わたしの取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり……
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……
【長門有希(3)宇宙人】
ホーッホッホッホ……
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:01:25.31 ID:O2wowKnOO
- ――図書館
長門(世界の崩壊と創造は、何者かによって防がれた。
また、彼と一緒に図書館に来れる。それを私は望んでいる。
そう願う理由は、わからない)
スッ……
長門(あ、本が……)
喪黒「おや、この本あなたも探してらしたんですか?」
長門「……そう」
喪黒「ホッホッホ、『感情心理から見たコミュニケーションの研究』……
これはまた、お若いのにずいぶん難しい本をお読みになるのですな。本がお好きなんですか?」
長門「……割と」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:02:46.08 ID:O2wowKnOO
- 喪黒「申し遅れました。実はわたくし、セールスマンをやっているのですが」
長門「……ココロのスキマお埋めします?」
喪黒「はい、ちょうどあなたにピッタリの品物があるのです」
長門「いらない」
喪黒「ホッホッホ……そうですか。しかし今のあなたには間違いなく必要な物だと思いますよ? いかがです?」
長門「いらない」
喪黒「それは失礼しました……まあ、もし興味がわいたなら、その名刺の裏に書かれた場所まで来て下さい。
では、またお会いしましょう……ホーッホッホッホ」
長門「しまった……本を持って行かれた」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:04:43.86 ID:O2wowKnOO
- ――その夜
長門(名刺に書かれている住所はこの辺りのはず)
喪黒「ホッホッホ……お待ちしておりました」
長門「……どうして私がくることを?」
喪黒「セールスマンの勘というやつです。さ、こちらへどうぞ」
―――魔の巣
喪黒「この辺りは結構入り組んでいますから、迷っているんじゃないかと思って外でお待ちしていたのです」
長門「どうも」
喪黒「いえいえ、お気になさらずに……
ああ、そうそう。これが先日言っていた物なんですが……」
長門「違う。私がここに来た理由は、あの時あなたが持っていった本が読みたかったから」
喪黒「ああ、なるほど。そうでしたか。
……これでしたね、どうぞ」
長門「……」
ペラペラ……
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:05:36.71 ID:O2wowKnOO
- 喪黒「しかし何故その本をお探しだったのですか?」
長門「興味深いテーマ」
喪黒「感情に興味がおありで?」
長門「……」
喪黒「失礼ですが、あなたは感情というものが非常に乏しいようにお見受けします」
長門「そう生まれたから、仕方ない」
喪黒「ですが、本当は欲しいのでしょう? 感情が……」
長門「理解したいだけ。有機生命体とのコミュニケーションがより円滑に行えるようになる」
喪黒「ホッホッホ、ま、そういうことにしときましょう」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:08:16.06 ID:O2wowKnOO
- 喪黒「しかし、やはりこれはあなたに必要な物でした。どうぞ」
長門「これは?」
喪黒「一見するとただのハンドクリームですが、これを、ちょっと失礼……
ここです、手相の感情線と呼ばれるところに塗れば、一時的にですが感情が豊かになるのです。
何かを理解するには体験するのが一番です。どうぞお試しください」
ぺたぺた
長門「……特に変化はない」
喪黒「ホッホッホ……効果が表れるまでにはしばらく時間がかかるのです。まあ、明日のお楽しみということで」
長門「……そう」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:11:12.45 ID:O2wowKnOO
- 喪黒「そのクリームは差し上げます、毎日就寝前にお使い下さい」
長門「今、お金を持っていない」
喪黒「それはまだ試作品ですので、お代は結構です。その代わり、今度使い心地を報告してくださいな」
長門「……わかった」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:13:37.73 ID:O2wowKnOO
- ―――翌日、部室
キョン「お、長門、相変わらず早いな」
長門「あ……キョンさん、こんにちは!」
キョン「な……長門?」
長門「どうしたんですか? あ、そうだ。キョンさんもお茶飲みます?」
キョン「いや……」
長門「……いらない?」
キョン「え、あ、いや、飲もう……かな」
長門「それじゃ、すぐ入れますね! あ、紅茶と緑茶どっちがいいですか?」
キョン「じゃあ、緑茶で……」
長門「はい! では、ちょっと待っててくださいな」
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:15:01.16 ID:O2wowKnOO
- キョン「な、なあ……今日はどうしたんだ? 何かあったのか?」
長門「え…? 私、どこか変ですか?
……はいお茶です。熱いから気をつけてどうぞ」
キョン「いや決して変ではなく、むしろこれが普通なのだろうが、何と言うか……あちぃっ!」
長門「あ、大丈夫? もう……変なのはキョンさんだよ? 何だか慌ててます」
キョン「すまん、何だか混乱しちまって……」
長門「ふふふ、やっぱり変だ……」
キョン(おお……あの長門が笑うとは……)
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:15:55.86 ID:O2wowKnOO
- 長門「あ、あの……ところで、キョンさん……一個お願いがあるのですが」
キョン「あ、ああ、なんだ?」
長門「もう一度、あの図書館に行きたいのです……あ、あなたと」
キョン「ああ、この前の図書館か? いいぞ、行こうか」
長門「わ、ありがとうございます! あ、お茶……おかわりどうですか?」
キョン「そうだな、じゃあ貰おうか」
長門「はい!」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:16:51.12 ID:O2wowKnOO
- キョン「なあ、長門」
長門「何でしょう? 今度は紅茶がいいですか?」
キョン「そうじゃなくてだな、何があったかは知らんが、今のおまえのこと結構好きだぞ?」
長門「う……からかってる……」
キョン「いや、率直な意見というやつだ」
長門「うー……意地悪をするならお茶はあげません!」
キョン「いや、だから意地悪ではなくてだな」
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:18:40.42 ID:O2wowKnOO
- 長門「ふふ……冗談です、はい……お茶です」
キョン「ああ、ありがとうな。そうだ、図書館へ行くのはいつにするか?」
長門「そうだなぁ……土曜日なんていかがですか?」
キョン「そうだな、じゃあ2時に駅前でいいか?」
長門「えと、待ち合わせは公園がいいかも、です」
キョン「そうか、ならそうしよう」
長門「はい! あ…そう、それと……キョンさん、また、家にも遊びに来てくださいね?」
キョン「いいのか?」
長門「あの部屋は……一人だと広すぎます、寂しいです……」
キョン「そうか……わかった、また遊びに行かせてもらう」
長門「はい! 楽しみです……!」
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:20:14.29 ID:O2wowKnOO
- ―――魔の巣
長門「あの、喪黒さんは……」
喪黒「……やあ、これはどうも、お久しぶりです。なかなかご報告にやってこないので心配していましたよ?」
長門「ごめんなさい……すっかり忘れちゃってて……」
喪黒「ホッホッホ……それでいかがです? 何かおかしな点はございませんか?」
長門「おかしいことなんて……これを使ってから良いことばかりですもの」
喪黒「いやぁ、それを聞いて安心しました」
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:21:26.21 ID:O2wowKnOO
- 長門「あの……実はハンドクリームがもう切れてしまって……新しいものが欲しいのですけど」
喪黒「申し訳ありませんが、それは出来ません」
長門「え……な、何故ですか!?」
喪黒「大変申し上げにくいことなのですが、実はあのクリーム、その後重大な副作用が見つかりまして。
ですから、あなたに異常がなくて安心しているところなのです」
長門「そ、そんな! お願いします、明日大事な用があるんです! だから、あのクリームが絶対必要で……!!
あの、今日はお金あります! だからクリームを……」
喪黒「ダメです。欠陥があるとわかった以上、お譲りするわけにはいきません。
それにクリームで得た感情など、しょせん作り物なのですからあまり依存なさらない方がよろしいですよ?」
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:22:41.91 ID:O2wowKnOO
- 長門「でも……でもダメなんです!」
喪黒「いいえ、いけません。
おっと……失礼、わたしちょっとトイレへ……」
長門(どうしよう、どうしたら……
あ! 喪黒さんの置いていったバッグ……もしかしたら、この中にあのクリームが入っているのかも……!)
マスター(……キュッキュッ……)
長門(マスターさんはこっちを見てない……今なら……!)
カパッ!
長門(あった! ハンドクリーム!!)
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:24:25.15 ID:O2wowKnOO
- 長門「ハア、ハア……クリームがあれば、キョンさんも私のこと……」
喪黒「ホッホッホ……いけませんなァ」
長門「も、喪黒さん!」
喪黒「他人の鞄を勝手に開けてはいけません、ましてや中の物を盗むなんて」
長門「ごめんなさい! お金は払います……だから! これが無いと私っ!」
喪黒「それほどおっしゃるのであれば仕方ありませんなァ……
ただし、もうどうなっても知りませんよ?」
ド――――――ン!!!
あぁぁあああ!!!
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/03/02(日) 02:28:25.03 ID:O2wowKnOO
- ―――土曜日
キョン(長門のやつ遅いな……よし、迎えに行ってやるか)
カチャッ、カチャッ……
キョン(おかしいな、寝てるのか?
……お、自動ドアが開いた……)
ドンドン……
キョン「長門! 俺だ、起きてるか? 長――…
ん…? なんだ、鍵が開いてるじゃないか」
ガチャ……
キョン「長門、いるのか?」
――あ……は……ひ……!
キョン「おい……な、長門!?」
長門「フフ……アハハハハハハハハハ!! アハハハハ!! アハ……!
あう……うぅ……ヒック……ヒ……うあ……ふ、ふふふ……!
アーッハッハッハッハ!!」
喪黒「これで、感情豊かな素敵な女性になりました。
それにしても、どうして人間は自分にないものを欲しがるんでしょうねぇ。
あれ? 彼女はヒューマノイド・イっ…! アイタ、舌噛んじゃった。ま、どっちでもいいか!」
ホーッホッホッホ!!